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宇宙に一番近い場所
2008-10-29
運ちゃんはラサまで2泊くらいで着くよ、なんて言っていたのに結局3泊かかった。このヒッチハイクは今でも忘れられない。高山病にもかかり、本当にヤバいかもしれない、と思っても体は未体験のゾーンに運ばれていく。
運ちゃんにも、同乗者にも本当に言葉が通じない。
トイレも、ご飯も、気持ち悪くなったとか何かを伝えるのがホント大変だった。
初日は夜中の12時ごろまで走り続け、途中に立ち寄った家? レストラン? みたいなところで遅めの夕飯を食べた。ニワトリ一匹をまるごと炒めたようなワイルドな料理で、盛られた皿のはじっこから足がひょっこり見えている。マンガに出てきそうな料理だった。でも結構イケる。
なぜかラサに着くまでご飯は全て運ちゃんにおごってもらった。
お腹いっぱいになった僕は、移動疲れがたまっていたのもあって運転席の後ろのスペースの毛布にくるまって寝た。
なかなか寝つけず、窓越しに見える夜空を眺めていた。
進行方向にはまっすぐ立ったオリオン座が見えている。
確かにラサのある南の方角に進んでいるようだ。
揺れが激しくて何度か起きたあと、僕は眠りについた。
いつの間にか停車していたトラックで、8時ごろ目が覚めた。
足の先の感覚がほとんど無い。
爪先を触ってみると自分の足の感覚は無く、何か金属を触っているような感覚だった。
手も十分に冷たくなっているのだが、その手のひらの熱さえ足に伝わっていく。
というのも、この後の写真を見てもらうと分かるんだけど上はコートっぽい服を着て行ったのに、下はなぜかジャージ一枚でチベットまで行ってしまったのだ。
出発準備してるときに、東南アジアに行ったときの感じでいっか、と何も考えていなかった。
凍傷とかにならなくて助かった。二本足で歩けていることに感謝したい。
ほとんど寝た気がしない。ちょっと体を起こすと頭が痛くてしょうがない。高山病だ。
高山で寝てしまうと、呼吸の回数が減って酸素の摂取量が減るので、高山病はひどくなる。
昨日どれだけ走ったのか分からないけど、寝ている間に高度が上がっていたのなら最悪のパターンだ。それでもなんとか体を起こしてみると、他の人の姿が見えない・・
しばらくして体の中に熱が感じられるようになってからトラックの外に出るが、寒くて、頭がクラクラして、目眩がひどくて、何度も吐いた。胃液しか出なかったけど少し楽になった。
そうだ、高山病対策には水をたくさん飲めと何かで見てペットボトルを何本か買ってきていたんだった。体の水分が不足すると、末端の組織まで酸素が運ばれなくなるらしいのだ。
他にどうしようもないので、トラックに戻って枕変わりにしていたバックパックの近くのペットボトルを手にする。
すっごい冷たい。そりゃそうか。
そしてすっごく固くなってる。
・・コチコチに凍ってる。
流石にこの氷を溶かす熱は今の僕には無い。
空に吸い込まれるような暗さと、音というものが全く存在しない静寂の中で、急に不安が大きくなっていく。
あれ、と思って時計を確認するとAM8時過ぎを指している。なのに外は真っ暗。
というのも、アメリカなど国土が東西に長い国の場合には、大抵複数の「標準時」を採用していのに、中国は「北京時間」という唯一の標準時を採用しているのだ。
だから朝8時でも、中国の東にある北京では朝日が昇りきっているのに、西にあるチベットではまだ夜明け前なのだ。
こんなところにも中国の強引さが見える。
だからチベットでは、親に門限は夜7時よ、なんて言われたら実際にはまだ外は昼間の明るさなのに家に帰らないといけないのだろうか。
と、そんなことはどうでもいい。
トラックの中に戻ろうかとフラフラ歩くと、近くに民家が1軒だけ建っている。
水だけでももらえないかと思って民家を覗くと、運ちゃん達が一段高くなった居間みたいなところで寝ていた。
なんなんだ? 知り合いの家なのか?
よく分からないけど、そーっと入って棚にあったペットボトルの水を拝借して飲んでしまった。
少しだけ楽になった。気がする。
寒い部屋の中でなんとか体温を下げないようにウロウロと歩いていると、運ちゃんがモゾモゾと起き出して、ほぼ同時にみんな起きて寝起きの悪そうな顔で順番にこちらを見る。
家の人なのだろうか。土間になってくるところに降りてきて、枯れ枝みたいなものを囲炉裏みたいな場所でパチパチと燃やしだす。
ようやく体をあっためることができる。
人は36度の体温がなければ生きていけないのだ。
ウォークマンでごきげん
部屋があったまってきたところで、朝食タイムになった。
食欲はある。けど体は重い。
お茶があまり熱くない。何度で沸騰しているのだろう。
運ちゃんが言うには、今は海抜5800mくらいのところにいるらしい。
富士山の二個分くらいの高さのところにいるらしいのだけど、想像も実感も湧かない。
陽気な運ちゃんと同乗者
道はまだまだ続く
日が昇り始めてきて、再びトラックのエンジンがかかる。
空は青い。それは見たことも無い青さだった。人工的に作り出すには不可能な青だ。
夜は夜で、今まで星をあれほど近くに感じた場所は無い。
今、僕は、地球上で最も宇宙に近いエリアに来ているのだ。
トイレも、ご飯も、気持ち悪くなったとか何かを伝えるのがホント大変だった。
初日は夜中の12時ごろまで走り続け、途中に立ち寄った家? レストラン? みたいなところで遅めの夕飯を食べた。ニワトリ一匹をまるごと炒めたようなワイルドな料理で、盛られた皿のはじっこから足がひょっこり見えている。マンガに出てきそうな料理だった。でも結構イケる。
なぜかラサに着くまでご飯は全て運ちゃんにおごってもらった。
お腹いっぱいになった僕は、移動疲れがたまっていたのもあって運転席の後ろのスペースの毛布にくるまって寝た。
なかなか寝つけず、窓越しに見える夜空を眺めていた。
進行方向にはまっすぐ立ったオリオン座が見えている。
確かにラサのある南の方角に進んでいるようだ。
揺れが激しくて何度か起きたあと、僕は眠りについた。
いつの間にか停車していたトラックで、8時ごろ目が覚めた。
足の先の感覚がほとんど無い。
爪先を触ってみると自分の足の感覚は無く、何か金属を触っているような感覚だった。
手も十分に冷たくなっているのだが、その手のひらの熱さえ足に伝わっていく。
というのも、この後の写真を見てもらうと分かるんだけど上はコートっぽい服を着て行ったのに、下はなぜかジャージ一枚でチベットまで行ってしまったのだ。
出発準備してるときに、東南アジアに行ったときの感じでいっか、と何も考えていなかった。
凍傷とかにならなくて助かった。二本足で歩けていることに感謝したい。
ほとんど寝た気がしない。ちょっと体を起こすと頭が痛くてしょうがない。高山病だ。
高山で寝てしまうと、呼吸の回数が減って酸素の摂取量が減るので、高山病はひどくなる。
昨日どれだけ走ったのか分からないけど、寝ている間に高度が上がっていたのなら最悪のパターンだ。それでもなんとか体を起こしてみると、他の人の姿が見えない・・
しばらくして体の中に熱が感じられるようになってからトラックの外に出るが、寒くて、頭がクラクラして、目眩がひどくて、何度も吐いた。胃液しか出なかったけど少し楽になった。
そうだ、高山病対策には水をたくさん飲めと何かで見てペットボトルを何本か買ってきていたんだった。体の水分が不足すると、末端の組織まで酸素が運ばれなくなるらしいのだ。
他にどうしようもないので、トラックに戻って枕変わりにしていたバックパックの近くのペットボトルを手にする。
すっごい冷たい。そりゃそうか。
そしてすっごく固くなってる。
・・コチコチに凍ってる。
流石にこの氷を溶かす熱は今の僕には無い。
空に吸い込まれるような暗さと、音というものが全く存在しない静寂の中で、急に不安が大きくなっていく。
あれ、と思って時計を確認するとAM8時過ぎを指している。なのに外は真っ暗。
というのも、アメリカなど国土が東西に長い国の場合には、大抵複数の「標準時」を採用していのに、中国は「北京時間」という唯一の標準時を採用しているのだ。
だから朝8時でも、中国の東にある北京では朝日が昇りきっているのに、西にあるチベットではまだ夜明け前なのだ。
こんなところにも中国の強引さが見える。
だからチベットでは、親に門限は夜7時よ、なんて言われたら実際にはまだ外は昼間の明るさなのに家に帰らないといけないのだろうか。
と、そんなことはどうでもいい。
トラックの中に戻ろうかとフラフラ歩くと、近くに民家が1軒だけ建っている。
水だけでももらえないかと思って民家を覗くと、運ちゃん達が一段高くなった居間みたいなところで寝ていた。
なんなんだ? 知り合いの家なのか?
よく分からないけど、そーっと入って棚にあったペットボトルの水を拝借して飲んでしまった。
少しだけ楽になった。気がする。
寒い部屋の中でなんとか体温を下げないようにウロウロと歩いていると、運ちゃんがモゾモゾと起き出して、ほぼ同時にみんな起きて寝起きの悪そうな顔で順番にこちらを見る。
家の人なのだろうか。土間になってくるところに降りてきて、枯れ枝みたいなものを囲炉裏みたいな場所でパチパチと燃やしだす。
ようやく体をあっためることができる。
人は36度の体温がなければ生きていけないのだ。
ウォークマンでごきげん部屋があったまってきたところで、朝食タイムになった。
食欲はある。けど体は重い。
お茶があまり熱くない。何度で沸騰しているのだろう。
運ちゃんが言うには、今は海抜5800mくらいのところにいるらしい。
富士山の二個分くらいの高さのところにいるらしいのだけど、想像も実感も湧かない。
陽気な運ちゃんと同乗者
道はまだまだ続く日が昇り始めてきて、再びトラックのエンジンがかかる。
空は青い。それは見たことも無い青さだった。人工的に作り出すには不可能な青だ。
夜は夜で、今まで星をあれほど近くに感じた場所は無い。
今、僕は、地球上で最も宇宙に近いエリアに来ているのだ。



